伶美うららはショーでも娘役トップスターの仕事を果たしています。
朝夏まなと、真風涼帆、それぞれへの寄り添い方。
一人でも凛とした佇まいで劇場の空気を変える力。
伶美うららは出過ぎず、埋もれず、演出意図を汲んで立ち居振舞うけれど、演出に振り回されるようなことはなく、「伶美うらら」の軸を持って歌い、踊り、演じています。
彼女の醸し出す雰囲気や表情の変化はショーをドラマにすると思います。
全ての表現が単層的、表面的ではなく様々な具材で織り成すミルフィーユのように重層的で、中詰で弾けている時でさえどこか深みを感じさせるのです。
ダンスは身体の可動域が広いからといってむやみやたらに全開で動かすことなく、初動から目的地まで最適な距離で踊るので残像には常に品格があります。
これぞ「宝塚の娘役」と唸るしかありません。
ここまで到達しているのに娘役で最も大きな羽根を背負っていないのが不思議でなりませんが、私の心にはナイアガラまでついた彼女の姿が映っています。
星風まどかは歌は持ち味を活かしパンチの効いた歌唱で今後にも期待が持つことができたのですが、ダンスや所作には課題を感じました。
シャキッと立ち居振舞う必要のある場面で若干だらしなく映ったり、ドレス(スカート)さばきがスムースとは言い難い瞬間があったり。。
特にS4の「コラールの姫」、確かに姫なので若々しさは不可欠ですが、どうも振り切りすぎているのかバランスが取れないのか子供っぽく見えてしまいます。
幼さを残しながらも高貴な存在感まで魅せて欲しかったです。
それでも研1の頃からの頭抜けた舞台度胸と押し出しは今もあるので、この課題は鍛錬によって新たな伸びしろになると信じています。
誤解を恐れずに言えば「研究科何年」とか「娘役トップスター」など究極関係ないのです。
まず舞台人として与えられた役割をきちんとこなし、それ以上のパフォーマンスで客席を魅了すること、安定感と攻める姿勢、チームワーク(調和)、舞台とファンへの愛が基本だと思います。
星風まどかが大きく成長するため、殻を破るため、このショーにおいても千秋楽までぜひ格闘し続けて欲しいです。
ポテンシャルは絶対にあるのです。
今まで通り、いやそれ以上に期待し、応援することを誓います。
続きます。
週末、まず土曜日は高校の同窓会に出席しました。
学校のカフェテリアで開催され、口伝えで集まった同級生は約100人。私立なので地元人ではなく様々な地域から生徒が集まる我が母校(女子校)ですが、なぜか親子二代に渡り通うケースが多く、かく言う私もその一人。母娘二代でお世話になった先生もいます。
高校生の親になった同級生同士が学校で再会することも多く、今回の同窓会もそれがきっかけで卒業後初めて開催されたのでした。30年以上ぶりに会った同級生達、それぞれに人生経験を重ね、年齢的にはすっかりオバチャンになったにも関わらず、みんなキャラは全然変わっていないのが懐かしくて嬉しくて大盛り上がり!旧姓に由来する呼び名で呼ばれ、毎日通った校舎巡りをして、もう30年の時を飛び越えて高校生に戻ったみたいに楽しくて楽しくて笑いっぱなし♪
当時お世話になった先生も何人も出席してくださいました。勉強はほとんど真面目にしていなくて(笑)、授業中も友達とおしゃべりするか居眠りするかだった私が、ある新卒の若い国語の先生の授業だけは面白くて大好きでした。現在は副校長と偉くなられたその先生、新卒で担当した私達には一際思い入れがあるそうで、最後のご挨拶でお話されたお言葉にジーンとしました。
「生徒達の人生に花を咲かせるため、教員の仕事は種を蒔くこと。みなさんこれまでたくさんの花を咲かせてきたでしょうし、これからも咲かせていくことでしょうし、自身で種も蒔いてきたことでしょう。」
学校に通っていた頃も毎日楽しかったけど、30年ぶりに集まっても温かくて楽しい雰囲気は変わらず、きっとそれは伸び伸びといさせてくれた大らかな懐深い校風が育ててくれたものなのかなと思いました。みんなで娘がいたら通わせたいと言い合えるほど。
本当に楽しくて楽しくて、人生の中であの時間があったこと、一生つき合っていける大切な友人にたくさん出会え、人格形成に大事な思春期に、私の人生に種を蒔いてくれたあの学校に通えたことを心から幸せに思った1日でした。私はこれまでの人生で誰かの心に種を蒔けたのかなぁ。うーん・・。
あ、以前も書きましたが我が母校、大物タカラジェンヌを二人も輩出しているのが自慢♪大物だからね(笑)
日曜日はまぁさまラストデイをライブビューイングで見届けました。
まぁさまファンのみなさまの最後に劇場へ見送るいってらっしゃい、千秋楽の幕が開いてしまう直前の劇場の空気感、最後の男役姿を見届ける気持ち、もう二度と見ることのできない誇らしい大羽根姿に込み上げる想い・・手に取るようにわかるだけに、始まる前から映画館にいた私まで泣きそうに・・。
お芝居「神々の土地」はまさにまぁさまが築いた宙組の進化の集大成。宙組生それぞれの色濃い役の作り込みが絶品で、悲愴なロマノフの終焉を文芸作品のような美しくドラマティックな名作に見事に完成させていました。退団公演でここまでの素晴らしい作品が巡ってくるトップさんはそうそういないのではないでしょうか。まぁさまも宙組のみなさんも幸せでしたね。
退団公演千秋楽のトップスターが最後の瞬間に放つ神懸かり的なパフォーマンス、送り出す組子達の最後の瞬間にかける熱量と集中力を1年ぶりに感じました。心震える宝塚ならではのあの感覚。
全編通してどの場面を切りとっても絵画のように美しい作品。
最後の任官式のまぁさまドミトリーのキレキレのダンスはため息が出るほど芸術的でした。このまぁさまのフォルムの美しさたるや。抜群のスタイルでダイナミックだけど品のある、まさに貴族なまぁさまにしかできない見せ場でした。
ラスプーチン愛ちゃん。最初に観た時はただただ人間離れしたモンスターだと思いましたが、3回目の観劇では実は革命へと蜂起寸前の民衆とは乖離した宮廷の中で、いちばん人間そのものとうか、人の尊厳の権化というか、上田先生が書かれたこの作品の中ではただの怪僧ではない役割があったと思いました。(本物のラスプーチンはどうかわかりませんが)実際ラスプーチン暗殺後、決起する民衆の後ろに象徴のようにラスプーチンの姿がありましたし。観る者に強く訴えるものがある愛ちゃんの渾身のお芝居に胸打たれました。ご本人も仰っていましたが、男役要素の一切ない、役者としての境地でよくあそこまでやりきったと思います。愛ちゃんの熱演がなければ成り立たなかった作品。素晴らしかったです。
愛よりも信念に生きる道を選び、皇族としての運命から逃げることをしなかった高潔さが美しいドミトリーとイリナ。
しかしお互いへの想いを滲ませる場面が随所にあり、切なくて泣けました。オリガと婚約したドミトリー、二人が舞踏会から腕を組んで去っていく姿を見つめるうららイリナの美しい白い背中が彼女の心情のすべてを語っていて胸が締め付けられました。あの背中だけで寂しげに女心を語る芝居はうららちゃんが娘役として培った集大成を見た気がします。彼女をただ美しいとありきたりの言葉だけで語りたくないと思いました。もちろん、佇んでいるだけでも芸になる、天から授かった美貌の持ち主です。彼女はいつもどこか寂しげで、スカステの番組や明るいショーであっても。大人っぽくて品があり、想いを秘め憂いを帯びたヒロインを演じれば誰にもできない世界観を作り出せる貴重な娘役さんというか女優。それは彼女の持ち前の寂しさオーラが武器となっているのかもしれません。誰にも負けない武器を持つ表現者は尊い。しかし不器用で役の振り幅は広くない。1年中休みなく次々と何本も作品をこなさなければならない今の時代の宝塚ではトップ娘役になれなかった、劇団の判断は妥当だと私は思います。でも彼女は多くの宝塚ファンの心に美しい夢を残してくれました。劇団の評価も退団公演の扱いを見れば明白です。みりおんが1作前に退団したことで、自身の退団公演では素晴らしい上田先生の作品の、事実上のヒロインでありトップスターの相手役を演じられた、1作限りのトップ娘役に等しいのではないでしょうか。それはうららちゃんが引き寄せた運命のシナリオかもしれないし、神様のご褒美かもしれない。何れにしても特別な娘役さんだったことは間違いありません。
ペルシャ行きの列車から飛び降りて、別れが言いたかったとイリナに会いに来たドミトリー。皇族としての信念に従い想いに蓋をして閉じ込めていた二人が、初めて自分の心のままに一人の男性、女性として愛する人と抱き合った永遠の別れの前の最後の一夜。なんてドラマティックなんでしょう。(オスアンみたいだけど)
女性の脚本家の作品は言葉の選び方が繊細で美しいのが好きです。
「さようなら、わが麗しのイレーネ」
うららちゃんでなければ成立しなかったセリフでしょう。容姿だけでなく心も凛とした生き方も何もかも麗しかったイレーネ。
「ずっと呼んでみたかった、初めて会った時からずっと。あなたが結婚する前の名前を。イレーネ」
「あなたに一目惚れした、結婚前のあなたに会いたかった」よりずっと詩的でロマンチックで素敵?
生き残ったドミトリーが最後に銀橋を渡りながら歌う場面。軍服を脱いでトレンチコート姿になったドミトリーが男役を全うして旅立つまぁさま自身に見えて胸がきゅーっとしました。劇場の空気をいっぱい吸いこむように大きく両手を広げて歌い上げ、清々しい笑顔を見せたまぁさま。それはドミトリーというより、朝夏まなとが男役芝居を悔いなくやりきったという達成感の表れた笑顔だったと思います。
ショー「クラシカル ビジュー」
プロローグの後の愛ちゃんとまどかちゃんがメインの場面。
お芝居でのまどかちゃんにはみりおんの面影を感じ、ショーでの男達を翻弄する場面の表情の豊かさやキレのあるダンスはちょっとちゃぴに似ているかもと思いました。そういえば100期生のまどかちゃんの初舞台は月組100周年記念公演でした!
やはり黒燕尾は泣けました。花組時代からの運命の相手役みりおんと同時退団ができなかったのは残念ですが、まぁさまがこれぞ朝夏まなととして残したかったものという黒燕尾に長い時間をかけることができたのは、結果的によかったのではないでしょうか。
一連の黒燕尾の流れ、すべてはまぁさまの宝塚人生そのものだと思いました。時空を旅するように一人軽やかに踊り始めるまぁさま。夢を叶えて宝塚の舞台に立った少女が、様々な経験を経て、仲間と舞台を作り上げる喜びを知り、ついにタカラジェンヌの頂点、栄光のトップスターの座を掴み、たくさんの男役を従えて逞しく踊る群舞。男役トップスターとして成し遂げた誇りと自信に溢れた凛とした舞は、崇高で最高にカッコよく、もう涙が止らなかったです。
黒燕尾コーナーのラスト、真風氏と手を取り合って踊ったまぁさまが、最後に真風氏を見つめたまま、うんと大きく頷いて手を離しました。君なら大丈夫、安心してバトンを渡せるよと言っているようで、感動して号泣。
サヨナラショーも素晴らしかったです。ソーラン宙組?は生で観劇した時も、本当に劇場が揺れるほどの凄まじい盛り上がりで大興奮!これはまぁさま率いる宙組でしかできないと思いました。
必殺、銀橋脚かけもまぁさましかできない切り札でしたね。
DSを挟んだ3ヶ月間の退団公演は最後の試練と言われるほど精神的にも体力的にも超過酷だそうで、千秋楽はもう限界を超えていたかもしれませんが、エキサイティングなパフォーマンスは圧巻でした。
サヨナラショーを観て改めて思ったのが、まぁさまは2年半の任期中、稀に見る作品に恵まれたトップスターさんだったということ。「TOP HAT」に始まり、大作の再演、人気若手演出家によるオリジナル、原作物、どれもハズレのない素晴らしい作品揃い。芝居、歌、ダンス、恵まれたスタイルと4拍子揃ったバランスの良さに、実力派トップ娘役のみりおんが相手役だったことが質の高い良作ばかりを引き寄せたと思います。まぁさまご自身も、彼女だからできた作品がたくさんあると仰っていましたよね。そして宝塚の宝「エリザベート」のトートまで演じたのは凄いです。トートは男役トップスターでも宝塚史上9人だけが演じることのできたお役。この矜持が一生の宝だということをガラコンを観て知りました。だって真咲さんの演じたルキーニは何度ガラコンをやっても脇役だけど、トートはずっと主役で扱いが違いますからね。
サヨナラショーのラストは「シェイクスピア」の「Will in the world」作品もこの主題歌も大好きでした。
「この世界は一つの劇場、人は誰でも皆役者 舞台の上に現れてやがて立ち去るその日まで」
生田先生の書かれた素晴らしい歌詞に泣いたなぁ?。
いつも仲間の大切さを口にしてきたまぁさまらしく、何度も組子達を見回していた幸せそうな笑顔が印象的でした。
宝塚人生最後の階段降りも黒燕尾でした。ご本人によると、1分1秒でも長く黒燕尾を着ていたかったからとのこと。そこにまぁさまの花組遺伝子が感じられた気がしました。
真咲さんの時もそうでしたが、宝塚人生を悔いなく全うし、袴姿で劇場の外に出た途端、清々しい少女のような笑顔に戻るんですよね。トップスターがどれだけの重責を背負い続けてきたかが、その解放された感でわかります。
「思い残すことはございません」愛のため銀河から落ちて来た宝石。花咲く道で拾われ、愛情で磨かれてこの宙で輝けた。
太陽色のダイヤモンドはたくさんのファンと組子達の心に愛と幸せの種を蒔き、その役目を全うしてもっと大きな宙へと帰っていきました。
まぁさま、16年間お疲れさまでした。これからは一人の女性に戻り、自由に羽を伸ばして第二の人生を謳歌してください。新しい道でご活躍されるお姿を拝見できる日を楽しみにしております。
さて、日付変わって今日は仕事の後、イベントで真咲さんにお会いできます?嬉しいな♪
そして週末は月組全ツ。楽しみ♪